歯周病治療

歯周病治療は、患者様のご協力が不可欠です。

歯周病とは何か?

歯周病は口の中の細菌によって引き起こされ、歯を支える組織 ( 歯周組織といいます ) に起こる病気の総称です。

歯周基本治療によって, 歯肉の炎症が改善した一症例>>

歯間乳頭保存術を用いて、歯周組織再生療法を行った一症例>>

まず健康な歯ぐきについて勉強しましょう!

正常な歯周組織

歯周組織(歯の周りの組織)は 4 つの組織からなります。

  • ・歯肉
  • ・セメント質
  • ・歯根膜
  • ・歯槽骨

歯周炎になると、歯肉の腫れ、歯槽骨の吸収(溶けてしまう)により歯周ポケットが歯肉と歯の根の間に形成され(歯根膜に沿って)、細菌の棲み家となります。そして細菌が増えるとさらに歯槽骨の吸収が促進し、また歯周ポケットが深くなるという悪循環に陥ります。

歯周病の分類

大きく分けて 2 種類が・・

•  「歯肉炎」  歯肉の炎症が歯肉の部分に限局して起きている状態です。たいていの場合は原因、つまり細菌 ( 歯垢と歯石 ) とり、丁寧なブラッシングをしてあげれば治ります。

•  「歯周炎」  炎症が歯肉を越え、歯を支えている組織である歯根膜、歯槽骨にまで及んでいる状態。進行度合いにより軽度、中等度、重度に分けられます。

 

歯肉炎

歯肉炎

歯肉の腫れがわかりますか?歯石も見られます。しかしX線では歯槽骨の吸収は見られず、炎症が歯肉に限られていることがわかりますので、「歯肉炎」と診断されます。ブラッシングと歯石の除去で治ります。

軽度歯周炎

軽度歯周炎

歯肉が腫れているのがわかりますか ?
X線で軽度の骨吸収が見られます。 “ 本来の骨の位置 “ から ” 現在の骨の位置 ” の差が、歯周病による骨の吸収の量になります。この方の場合は約 20 %の吸収で「軽度」と診断されます。
やはりブラッシングと歯石の除去で治ります。

中等度歯周炎

中等度歯周炎

歯石の沈着がみられますが、歯肉の腫れは軽度です。
部分的に 50 %弱の歯槽骨の吸収が見られ、「中等度」と診断されます。ブラッシング、歯石除去に加え、歯周外科などの他の治療が必要になる可能性があります。

重度歯周炎

重度歯周炎

X線では歯槽骨が歯の根の先端まで吸収しており、グラグラで噛むこともできません。「重度」と診断されます。
こうなると抜歯をするしかすべがありません。

歯周病の治療法

正しい歯周病治療とは

~歯周病治療は二人三脚です!~

進行した歯周病治療を成功に導くためには、患者さんのがんばりとわれわれ医療従事者(歯科医師、歯科衛生士)との二人三脚が必要です。

上の図のように、
1.患者さんによる「自己管理」(正しいブラッシング)
2.われわれがさせていただく「高い水準の治療」(ハイレベルな技術)
3.治療終了後のメインテナンス(定期健診とクリーニング)

の三つがあって初めて治療は成功に導かれます。

 

歯周病治療の流れ

応急処置

歯ぐきの痛み、腫れなどの急性症状に対処します。

 

精密検査

いったん痛みや腫れがひいた後、歯肉の状態を詳しく調べます。歯周病の進行には個々の患者さんの先天的な要素も歯周病の原因の多くをしめており、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の成り立ちと似ています。それゆえ患者さんのタイプを判定することが重要になります。全体のレントゲン検査やお口の中の写真撮影も含まれます。

 

カウンセリング

精密検査の結果をもとに、綿密な治療計画が立てられます。また患者さんに治療計画の説明が行われます。

 

初期治療

歯周病治療の基本となるもので、 ブラッシング の改善、歯石除去( スケーリング・ルートプ レーニング )などが行われます。簡単な虫歯の治療や、仮ブリッジ、仮義歯の作製も必要に応じて行われます。

 

二次治療

歯周病の進んだ部位のみに行われ小外科治療( 歯周外科手術 )が応用されます。失われた歯周組織を再生させる、再生療法もこの時期に用いられます。

 

修復治療

冠をかぶせたり、ブリッジ、義歯が作製されます。(必要な方のみ)

 

メインテナンス

せっかくよくなった歯ぐきを長持ちさせるため、 1 ~ 6 ヶ月ごとの定期検診を受けましょう。

 

 

 

1.ブラッシング

  • 歯周病の原因はプラーク ( 細菌 ) 。だから正しい歯磨きでプラークを取ることは歯周治療の基本です。
  • ブラッシングは回数や長さより、磨き残しがないように磨くということが大切です。歯と歯の間に隙間ができている人は歯間ブラシやデンタルフロスも必要です。
  • ぜひ一度歯科医院でブラッシング指導を受けましょう!

2.スケーリング・ルートプレーニング

  • 歯石はプラークが唾液や血液中のカルシウムなどのミネラル分と結合してできたもので、文字通り石のように固く歯や歯根表面に付着しています。
  • 歯周病に悪さをするのはこのうち根の表面についている歯石で歯周ポケット内にあるため気づかないこともしばしばです。
  • 歯石は歯根にこびりつくように強固についており、ブラッシングやうがい薬などでは決して取れません。これをとるための治療をスケーリング・ルートプレーニングといい、歯科医院での治療が必要です。

3.歯周外科手術

  • 歯周病が進行している場合には歯周外科という小外科手術が必要になることがあります。
  • これは深いポケットの中の歯石を確実に取るため、またホームケアをしやすいように歯ぐきの形態を整えるといった目的があります。
  • いくつかの方法があり、その中には歯周再生療法、審美歯周外科といった治療法も含まれます。
  • 外科手術といっても、時間的には 1 時間程度でスケーリング・ルートプレーニングとさほど変わりません。ただし当日はお酒や運動は控える必要があります。

4.レーザーと歯周治療

  • 最近歯科でもレーザーを歯周治療に応用する試みがあります。しかし現在のレーザーでは歯根面を傷つけずに、また歯ぐきを切開することなく歯石を取りきることはできません。レーザー単独では歯周病は完治しない理由です。

歯周基本治療によって, 歯肉の炎症が改善した一症例

患者概要

患者: 34歳 男性
主訴: 右下の奥歯が痛い
現病歴 : 今週の月曜日に下顎右側第三大臼歯の持続性の自発痛を覚えたが、歯ブラシで歯肉をマッサージして様子をみた。しかし、同症状に変化がないため明海大学病院口腔外科を受診した。その後、歯周治療の依頼により当科に来院した。
全身所見: 花粉症(10年前から)
家族歴: 特記事項なし
喫煙歴: なし

初診時口腔内写真

写真から見てとれるように、口腔内の清掃状態も不良で辺縁歯肉の炎症も著しく、特に前歯部において着色と歯石の沈着も確認できます。口蓋側歯肉には堤状隆起がみられ、鼻疾患の影響からか口呼吸が疑われます。また、歯列不正も認められます。

診断:中等度慢性歯周炎

問題点:
  歯周疾患に対する知識の欠如
  口腔清掃不良  
  全顎的な歯列不正
  下顎右側第二小臼歯歯冠部補綴物の脱離
  多数歯にわたるカリエス
  口呼吸
  舌突出癖

治療方針

適切なブラッシング方法, 習慣を身に付け自身の口腔内に関心を持ってもらうこと.
機能性, 審美性, 清掃性に優れた歯列に改善すること.

ブラッシング指導後(初診から2週間後)

初診時から比べると若干歯肉の炎症がとれ、見えなかった歯石が見えてきました。磨く順序を決め、歯ブラシはシステマの44Mを購入し、まずは最低一日一回は指導どうりのブラッシングを行うようにしてもらいました。

歯周基本治療終了後口腔内写真(初診から4か月後)

初診から4か月後のIOPです。この間に縁上スケーリング、SRP、CR充填を行いました。
ここで注目してもらいたい点なんですが、患者の舌を見てください。ピンク色になっているのがわかります。これは患者自身が染め出しをした形跡です。ほぼ毎回患者の舌は染め出しのあとがあり常にモチベーションが維持できている状態だと思います。

歯間乳頭保存術を用いて、歯周組織再生療法を行った一症例

患者概要

患者: 64歳 男性
主訴: 左上の歯が痛い
現病歴 : 1か月程前に咬合時に上顎左側犬歯の疼痛および同部根尖に腫脹を認め某歯科を受診した.
スケーリングと鎮痛剤を処方されたが咬合時の痛みは消失しなかった. その後処置は受けず, 現在も上顎左側犬歯に疼痛があるため本日来院.
全身所見: 特記事項なし
家族歴: 特記事項なし
喫煙歴: なし 

初診時口腔内写真

主訴である上顎左側犬歯からは自然排膿, 出血が認められ疼痛もあるため現在は上顎の義歯は装着せず, そのため下顎の義歯も装着してないとのことでした. 口腔内の清掃状態は不良で歯面には帯状のプラークの付着が認められます. 一見辺縁歯肉の炎症は著名に認められなく、全体的に角化歯肉の幅があり, 顎堤の厚みがある口腔内です. また下顎前歯部ブリッジのポンティック下において著しい顎堤吸収が認められました.

診断: 咬合性外傷を伴う重度慢性歯周炎

問題点:
  歯周疾患に対する知識の欠如
  口腔清掃不良   
  深い歯周ポケット
  垂直性の骨吸収と, 根尖にまでおよぶ骨欠損
   多数歯にわたる動揺と欠損
  下顎前歯部顎堤の著しい吸収

治療方針

適切なブラッシング方法, 習慣を身に付け自身の口腔内に関心を持ってもらうこと. 感染源の除去を行い, 咬合性外傷からの残存歯牙の安定, 咬合支持域の確立. 歯周外科処置による歯周組織の改善を計ること. 清掃性, 審美的, 機能的な歯周補綴を行うこと.

上顎オーバーデンチャー装着前 口腔内写真

上顎オーバーデンチャー装着後 口腔内写真

上顎オーバーデンチャー装着時の口腔内写真です. 下顎のPDは前医のもとで作製したもので初診時は装着していませんでしたが, この時点では主訴の疼痛もなくなったため, 装着しています.

まとめ

歯周基本治療, 外科治療を通して現在は歯周組織の状態は安定している. 上下顎共に治療用義歯ではあるが不自由なく使用できており, 口腔内管理の重要性について認識している. プラークコントロールについてはやや低下してきているので再度, 染め出しを行いモチベーションの向上に努めたいと思います.